茶の間でおま。

本とかテレビとかすきなものたち。

朝井リョウ「スペードの3」(23)

 

スペードの3

スペードの3

 

リョウくんが宝塚を題材に小説を書いたと聞いて。

どこからどう見ても紛れもなくジェンヌがモデルとなっていて、彼女を取り巻くFC代表、中学時代に彼女に一目惚れをしたFC代表の同級生、そして本人と彼女の同期生。

三つから成る中編集なわけですが、ヅカファンとしてはちょっと冷静に読めなかったですね。とりあえずモデルは誰なんだろうってそればかり考えてしまったのがよくないと思うんですけど、もちろん特定の誰をイメージして書かれたものではないと思うし、どこぞで読んだインタブーでは「誰かのファン」である人に詳しく話を聞いてインスパイアされたらしいんですが、その「誰か」っていうのもひじょうに気にはなりますけど、たぶんその「誰か」っていうのはそんなに重要なことではないと読了後にやっと納得できました。

読む人が、それぞれに誰かを思い浮かべればいい。わたしはそうした。

宝塚という特殊な世界に生きる人たちの生き様というのは時に奇異で滑稽で、周りの人たちから見れば摩訶不思議なものなんだろうなというのがよくわかりました。なんたって100周年ですから。伝統芸能ですから。そこには先人たちから脈々と伝えられてきているいろんなものが詰まっているんですよ。苛酷であることは誰だってわかるだろうに、それでもそこを目指してしまう。まるで自ら燃えてしまうことをわかっていて火に近づいてしまう生き物のように。そこにある夢とか憧れといった甘い言葉で語られるものは決してやさしいものではない。触るとやけどをしてしまうような存在。

何かに一生懸命になってる人を笑うのは簡単だけれども、自分たちは温く生きてるくせに人を指さして笑ってる人たちのことをわたしは決して信用しないし尊敬しない。

自分に理解できないものを簡単に笑い飛ばしてほしくない。

少なくともわたしはリョウくんに、わたしの好きなものをバカにされたとは思わなかったし、苛酷な女ばかりの世界に作家として興味を持ったというその思考には共感する。彼はあkbの総選挙やASAYANの娘。オーディションについてもインタブーで触れていて、そういった女子だけの世界での競争にいたく興味があるようです。男子だと、女子のようにはならないんだって。そのアイドルたちをテーマにした次回作にも期待してます。