茶の間でおま。

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宮木あや子「雨の塔」(46)

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雨の塔

雨の塔

 

よい百合本でした。

ピンと張りつめた文章から伝わってくる硬質なものが非日常的でそれゆえに登場人物に共感できにくい(設定とか)んだけど、それでも相手を求めずにはいられない焦燥感というのはヒリヒリしたし、心だけじゃなくて身体がつながるシーンはぞくぞくしました。このさじ加減が絶妙でした。

出てくるのは四人の少女で、その描き分けというのは曖昧なところがあって混乱もしたし、小津の唐突な感情の錯綜っぷりには面喰ったし、悲しい最期にもどかしい思いをしたけれど、でもその混迷っぷりもまた少女のリアルなんだなって思えた。幸せになれたはずの人たちがそうならなかった理不尽さに切なくなった。

設定の不思議さは大事なことではないんだろうけれど、それでも外界と隔絶された世界というのは淫靡で、その必要性はどこにあったのかと言われれば世界観を作るためだったのだということに尽きるのかな。もう少し説明がほしかったけれども。ただの尼寺だったのか。でもチャンスがあれば還俗できるんだよね。みな諦観しながらも外の世界への憧れは捨てきれずその狭間で生きてる様子に嘆息しました。好きです。