茶の間でおま。

本とかテレビとかすきなものたち。

湊かなえ「絶唱」(23)

阪神淡路大震災から20年。

 

絶唱

絶唱

 

なるほど湊さんの経歴にドンピシャなのですね、武庫女を卒業し、青年海外協力隊としてトンガに二年赴任、のちに作家となる。

どこまでがフィクションでどこまでがそうでないのかは確かに興味がありますが、文中にあるように、きっと恐らく20年間ずっと湊さんが抱えてらした想いをようやくこういった形で表に出すことができたことが大事なのであって、まあそれは湊さんの事情なんですけど、それにわたしたち読者がつきあってあげればいいんじゃないかなと思います。

あの地震が他人ごとであった人も、湊さんと同じように軽々しく言葉にできずに語ることのできなかった人も。

震災のおかげで何かを得ることに罪悪感を持っていたこととか、あの地震がなければとずっと思って生きてきたのであろう主人公(湊さん)の気持ちが痛いほどに伝わってきたので、言いたいことがちゃんと伝わる作品だと思います。

わたしはいつだって境界線が意味をなさない内側でも外側でもないところにいた人間で、だからこそ軽々しくあの地震の時は、って自身のことを言えるんだけれど、今もなお内側や外側、もしくは境界線上にいた人たちはこんな風に言葉にすることもできずに想いを抱えてるんだろうなと思うと、呑気なことを申し訳なく思うけれど、いつかわたしが内側に立つときが来たら、その時にはこういうことを思い出したいです。