茶の間でおま。

本とかテレビとかすきなものたち。

月組大劇場「グランドホテル/カルーセル輪舞曲」

二回目行ってきましたー。

よかった。

いやもうよかった。

初見時は物語をなぞるのと気になる人たちの配置を確認するのにせいいっぱいだったなとわかるくらいに、二回目はとても余裕をもって見られて、だからこそいろんなことが胸にグッときて、あの、ほんとによかったです。

みやさまのキュートなオットーがとってもキュートで、たまきさんの男爵は貴族ならではの世間知らずなところが人の良さを十二分ににじませてて、ちゃぴこさんのグルーシンスカヤの躁鬱なところもかわいくて恋に堕ちた大人の女性像にちっとも違和感がなかった!ブラボー!Bonjour,Amourはまさに圧巻でした。素晴らしかった。海ちゃんのフラムシェンはどこか自分の武器が若さであることを知っていて、自分が無敵なのだと知っているその傲慢さがかわいかった。男爵に言われて踊るオットーのダンス、あなたとDance with youと歌うその軽やかさがよかった。抱えてるものは重いはずなのに軽やかに人生を泳いでるように見えた。ラファエラの憂いもエリックの無垢な喜びも素直に受け止めることができたから、役替わりを観られてほんとによかったです。精密に計算されたと思われる舞台上での絵面がやっぱりどこを切り取ってもさいこうにクールで、一番は終盤の男爵の幻想シーンで時折挟まれるマネキンチャレンジ(違)光の加減もあってほんとうに一瞬を切り取ったように見える。きっとあのポーズも細かく設定されてるんだろうな。

役替わりについてはどっちがどう、という意見は特にないんだけれども、息子が生まれたんだ!って純粋に歓喜するエリックが男爵の金のシガレットケースを受け取る場面では泣きました。それを取り出したみやさまが「友人の男爵から」って言われたことにも。あの人はいい人だった。とってもいい人だった。その言葉が沁みて、それがさらにたまきさんと重なって、ああ、たまきさんはほんとにいい人だなって、ちゃんと思うことができました。よかった。

でもやっぱり部屋にいるのが見つかった時に「あなたの呼吸した空気を、呼吸するために」っていう言い訳はドン引きの極みだし、そりゃフロントに即電話しちゃうわよ・・・って頭抱えるしかなかったです。開き直りのストーカー怖い。それなのに「彼は誰。悪い人じゃないみたいだけど」って歌うちゃぴこさん完全にだまされてる!きづいて!!ってすごくなる。だまされたとしてもいいから、それでも彼女はそれにすがりたかったのだなとおもうとせつなくなるしかなしくなる。あなたは一人じゃないし、あなたのことをだいじにおもってくれるひとはすぐそばにいるのに、でもそのことに気づかないで孤独の中で死にそうになってたことがかなしい。彼女を救ったのが男爵だったということがかなしい。いつか彼の死を知るだろうけれど、その時にラファエラは勝利を確信するんだろうか。彼女の完全勝利を。

みやさまとたまきさんのチャールストンもとってもキュート。はしゃぐオットーとそれにつきあってあげてるふりをしながらも巻き込まれていくことが楽しい男爵。悪い人じゃないんだと思う。ただ、それ以外の生き方を知らないだけ。だからこそちゃぴこさんのネックレスもみやさまのお財布もすぐ返しちゃうし、盗みに入ったはずの豚野郎の部屋でピンチに陥ってる可愛い子猫ちゃんを助けずにはいられなかった。そして。

ちゃぴこさんの部屋に神様がバラバラにして売るために作ったとしか思えないようなこんなダイヤとこーーんなルビーのネックレスがあるよと教えたのも、豚野郎の部屋へ行くように唆したのも、そしてその時いつもこれ見よがしに時にはまっすぐそのままつきつけたりしていた銃を手渡してあんな結末を導いたのもすべては運転手さんだった。そう思うとこの物語を動かしていたのは運転手さんで、なるほど彼の役回りというのはそういうことだったのかと、その果たす役の大きさにビックリする。

さてその運転手さんですが、株で儲けたオットーが男爵に気前よくわたしたお金を巻き上げる前、上手の椅子から立ち上がる時、前は吸っていたタバコは持っていたケースにちゃんと収めていてあんななのにお行儀がいいのねふふふ^^って思ってたんですけど、最後に煙を吐いてから舞台袖に投げ捨てるようになっていて、その振る舞いにぎゃーーっと座席でのけぞりました。たぶん、こっちのほうが、よりそれらしいとおもう。最後に回転扉から出てきて下手の奥にはける時に、正面向いて吸ったタバコの煙を左を向いて吐いていたのにもときめきました。決して上品ではなくてどこまでもいやらしくて粘着質で人の癇に障るようなことを言ったりしたりする人で、たとえばヴィトーさんのような仕事のできるクールなマフィアというのとは全然違って、発声も高めでどちらかと言うとチャラいかんじで、それでも時折気が短いかのように声色を変えて尖った声を出す様子がまさに不気味で恐ろしく、そしてさらに存在感を増していました。ただビジュアルはほんとうにカッコよくて、どんなにゲスなフリをしてもそれは揺るがなくて、だからこそほんとうはどういう人なんだろうと気になってしょうがないです。思う壺なんでしょうか。そしてまだ納得のいく答えは見つけられてないです。そういえば初日からしばらくは白手袋だったのが途中で黒の皮手袋に変わっていて、すわ何事と色めき立ったのですが初演が黒だったので黒に戻した特に深い意味はないというようなことをお茶会でお話されたようですが、運転手さんらしいといえばやっぱり白手袋ですよね、それならばなぜ白手袋に変更したのだとやっぱり気にせずにはいられなかったです。

そして気になると言えばやっぱり伯爵夫人とジゴロ。ふたりの存在についての解釈を中の人にぜひ聞いてみたい。生身の人間とは思えないような振る舞いがミステリアスさを深めてるとおもうんだけどなんにせよジゴロがうつくしすぎる。あの美しさが幽玄すぎる。一挙手一投足すべてが美しくて、彼は今何を考えてるんだろう、そもそも何をしてるだろう、と舞台の真ん中にいない時の様子にまで目を凝らして見ていたくなる。薄暗い舞台の端でたとえばソファに座って何かをやっているんだけれどもそれがすべてしっかり見えるわけじゃなくてとてももどかしかった。上手からだと物音に驚くすーさんの表情がよく見えたんだけど、きっともっといろんな表情をされてるんじゃないかな。ジゴロは人間に非ざるものに思えてその表情が変わらないことに違和感がないことにゾクゾクする。見てる者の想像力をかきたてる魅力的な存在だった。うつくしかった。

電話交換手ちゃんたちの小気味のよさも月娘ちゃんが凝縮されててよかった。みんながその価値を十二分にわかってるであろう足を華麗に組んでお仕事してる中で最下の美園さくらちゃんがまっすぐに足を揃えて座ってるのがかわいい。最下かわいい。みんな足の組み方違っててきっとそういうところもこだわってるんだとおもう。

役名もなくていわゆるモブのみんなも人数の分だけお芝居の数があって、そしてそれが毎回違うっていうからもうこれは全部を把握しようなんてぜったいむり!!!そうだ、チャールストンの場面でさちぴーがトッキーにダンスを教えるのも、ベルボーイが絡んできたりしてすごく楽しそうであれ絶対おもしろいやつ・・・って見たいものがたくさんありすぎて見えない!もどかしい!ばか!!!って身悶えしました。おもにれんこんちゃんなんですけど海ちゃんがハリウッドに行きたい!って歌ってる時のあのあたりベルボーイのお戯れとかさあああ!!!!ひびきちゃんがイケメンだったのは知ってる。しかしそれが限界だ・・・むねん・・・

ショーはただただテキーラカッコイイ黒燕尾カッコイイという感想がすべてなんですけど(わたしは無力だ)お芝居と違ってロックオンすることを一切躊躇わなかったのでもうそれで満足です。オペラいっぱいにとし子センパイの姿をおさめて心ゆくまで堪能しました。カッコよかった。ほんとすき。るみこさんのお茶会レポでテキーラの場面について、下級生たちがめいっぱい背伸びしてキザってるのがかわいいけど自分はもう「等身大」でできるけどとおっしゃられたのがまさにその通りでその「等身大」でいられることの素晴らしさとそうさらっと言えることの自負というものにメロメロになりました。それが上級生の余裕というものなんですよね。ほんとにかっこいい。いいもの見せてもらった。しあわせなショーだった。