有栖川さんにとって三冊目の怪談集、だそうです(あとがきより)
いつもと違う文体に、いつもと違う漢字遣いに、いつも違うキャラクタたちのネーミング。全体的に硬質な印象。がんばってむずかしい漢字をいっぱいつかいました!感がぬぐえなかったのは頻繁に出てくるルビのせいかしら・・・漸減・泉下の人・瞋恚とか辞書をひきたくなる言葉たち。あと知ってる言葉をわざとに難しい漢字で表記していたり*1とかタイトルの「霊」も「くしび」と読ませたりとか、漢字についてのこだわりが雰囲気を作っていたとおもいます。
殺人事件や未遂事件は起こるけど、想いを遺して亡くなってしまったひとたちのそれを成就させるというのが趣旨で、動機は重要ではない系なのでそのあたりはあっさりしてて肩透かし。特にあの画家夫婦の妻の浮気相手が女性であったというのは、たとえば西澤さんだったらきっとギリリと心にくるような物語になりそうでざんねんでした。
お酒を呑めないから人生を損していると言われたという人に対しての探偵の言葉が印象的。
無数から一を引いても、依然として無数です。
*1:「眦(まなじり)」