茶の間でおま。

本とかテレビとかすきなものたち。

今村昌弘「屍人荘の殺人」(1)

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本ミス1位、このミス1位、文春1位と三冠を果たした上に第27回鮎川哲也賞受賞作にしてなんとこれがデビュー作という怪物作を読みました。

クローズドサークルの密室とか出てくるんだけどそのトリックとなるもののアイデア*1の勝利だったんだとおもいます。夜中に読んだので殺人現場とか殺人の描写がほんとに恐ろしくて背後が気になる読書体験でありました。こわかったよぅ。

憎しみのあまり二度の殺人を果たす*2その憎しみの深さに心底ゾッとしたし、図らずも密室殺人となったそのトリック*3がまさに設定の勝利だったなーと唸りました。

メインキャラクタと思われた探偵が序盤であっさり退場していったことにも度肝を抜かれました。なんという潔さ。ビックリした。

しかしながらいつもこういう動機の時にどうにもこうにも共感できなくて、動機が弱い・・・っておもってしまうのはわたしが薄情だからですかね・・・ってしばらく考えてたんですけど、たぶん彼女と彼女の間には大きな愛があったんだろうなって思うと納得できました。ただの優しかった近所のお姉さんじゃない。それだけであれだけの殺意は持てないだろうから。でも、彼女が身ごもりながらも恋人に捨てられたからといって死を選んだことに共感できないのはやっぱりわたしが薄情だk・・・すきだったら絶望するのかな、生きていけないっておもうのかな。

あとゆるせなかったのは、その彼がころされてしまったことに対して、女癖はわるかったけどでも彼には彼の事情があって情状酌量の余地もあったのだから、ってそもそもの原因である彼をかばう感情を持つ主人公ですよね。彼女が罪を犯すことすらもったいない、そんなことをするまでの人間じゃない、そんなつまらない男のために人生を捨てる必要なんてどこにもないのに。ただそれだけ。パラハラセクハラの合宿に集うざるを得なかったという事態そのものが不幸。*4

この中に殺人犯がいるかもしれない・・・!っていう状況と、外側に敵*5がうじゃうじゃいるっていうダブルの状況の中においてみんながわりと冷静で落ち着いてパニックにならずに眠ってたりしたのがなんとなく不自然だったり。班目機関という下心。

*1:まあね、ゾンビなんですけどね。ゾンビ。ゾンビに噛まれた人は漏れなくゾンビ化する、っていう共通の認識が読んでる人全員にあるっていうのが前提だったんだけど、その妙がすばらしかったです。なるほどのゾンビ。

*2:人間としてとゾンビとして二度殺すというカラクリ。

*3:ゾンビに噛まれた人間が匿われていた部屋でゾンビ化して同室の人間をかみ殺した。

*4:ゾンビ化した彼女にキスしようとして顔面の損傷が激しかったアレとかも、なんか純愛っぽくしようしてるけど結局おまえが先輩に逆らえずに生贄とわかって女の子集めたんがあかんねやん、そら彼女にもキレられるわあほか!!!っていう感想しかなかったのでなんつうかやっぱり男子の書いた女心をまるでわかってないラブコメだなーって感じがバリバリした。

*5:ゾンビのことですけどね!