茶の間でおま。

本とかテレビとかすきなものたち。

「検察側の罪人」

映画を観てきたけど、とってもびっくりしたー!

 

原作既読派にもうれしいびっくりでした。まず、序盤の諏訪部とエア麻雀のクイズ(クイズ?)がカットされててズッコケた。あそこで諏訪部を出し抜けなかったことによって沖野は敗北感を味わい、そして最上はちゃんと正解したという事実によって打ちのめされ、さらに追い打ちをかけるように、沖野には歯も立たなかった問題に橘さんが肉薄したということがとどめを刺す。キャラクタ設定がよくわかる場面だとおもってたのであっさりカットされててびっくりした。その後すぐにその橘さんが実は潜入ルポライターだと明らかになってさらにびっくり。そんな設定が追加されているとは!俄然橘さんの比重が大きくなる。しかしそれも諏訪部の情報収集によって最上に伝えられ、とても効果的に暴露される。最上が諏訪部の信用を得ている根拠となるのがあのエア麻雀クイズに正解したってことだったのが、最上の祖父と諏訪部の父がともにインパール作戦に従事していたということにとって代わる。そして増していく反戦のメッセージ。そういえばラブホの入り口を張っていたヤクザたちが戦争を話題にして軽口をたたいていた。さらには、政治家としての才能に惚れた義父を守るために犠牲になることを厭わなかった丹野の事件が、戦争賛成派の義父を総理にさせないためにスキャンダルをリークし、その情報の重大さのために日本中からそっぽを向かれ、失意のままに窓から飛び降りたという展開になっていたことにびっくり。最上は丹野の意思も継いで、日本を戦争から守るという大きな正義のためにも戦うことになった。橘さんの設定が変わったことによって、沖野班が早い段階で最上を疑うようになっていて、まあそれはタイトルからも薄々わかってることだったんだけど倒叙の色合いがさらに濃くなっていた。冒頭の場面で最上の言った「自分の正義に固執する検事はいつか犯罪者になる」的な言葉が全編を通して描かれている映画だった。そういえば橘さんが登場するシーンで、高齢者の運転免許に定年制を導入しようっていう署名活動が描かれていたけれど、それも終盤の松倉が暴走する車に轢かれるシーンで回収されていた。食えない諏訪部がとても優秀な会社を運営している様子が少し過剰というか、サービスがよすぎてわらっちゃう。芦名星ちゃんはとてもびじん。諏訪部はどうしてそこまで最上のことを許容してるんだろう。白骨街道とは。戦争とは。ふたりを結びつけるものにピンとこないことはきっと問題。白川弁護士は映画の中では完全なる蛇足だった。彼がいなくても松倉は無罪だった。その松倉は、最上の動機となる未解決のまま時効を迎えた荒川の事件の真犯人であっただけでなく、未成年の時にもひき逃げした少女を誘拐し、強姦し、その家族を惨殺していた。なんという鬼のような追加設定・・・!松倉がただのロリコンでうっかり人を殺してしまったんじゃない、性根の座ったド畜生だってことが明示されることによって、観てる側もさらに松倉にたいして嫌悪感を募らせ、最上に同情してしまう。売名行為でしかなかった白川弁護士も、あの茶番のようなパーティから退出する時に松倉への罵りの言葉を吐き捨てていた。その松倉を追い詰める要素が、彼の兄の存在で、松倉と違って彼の兄は良心の呵責に耐えかねて自殺する。一人生き延びた松倉。彼はまた今回も罪を逃れ、生き延びたはず、だった。人殺しは依頼しないと言った最上の言葉と、松倉の結末の齟齬にソワソワする。そして物語は、丹野の背負っていたものを受け継いだ最上がそれを沖野にも背負わせようとする場面で終わっていた。これもまたびっくり。別荘を出て行く沖野と、二階に上がって窓から外に出て、そして沖野の後ろ姿を見る最上。てっきり彼は沖野までも殺してしまうんじゃないかと息を詰めてたので、そのままクレジットが流れ出した時にはほんっとうにびっくりしました。高まった緊張がこういう形で一気に解れるとは。

気になっていた最上家ですが、娘ちゃんがモガ様って呼んだのたったの一回じゃないですか!!!!わたしモガ様めちゃめちゃたのしみにしてたのに!!!*1家の中では帽子を取れって娘ちゃんのウィッグ取るところがさいこうにすばらしかったです。あと妻は韓流にハマってるのではなくなぜか二胡を弾いてました。*2名古屋から東京に来てからずっと二胡を弾くことしかやってない的なセリフがあったんだけど、モガ様が娘ちゃんの学校の関係で二年だけ東京で単身赴任してて、娘ちゃんが高校卒業してから東京で一家勢揃いしたって話、映画の中ではなにひとつ説明されてなかったよね?っていうかそういう原作読んでないとわかんない設定が説明されないままに進んでいくことが多くて、これは初見さんにはかなり厳しいのでは・・・!という印象。

追記

・印象に残ったのは、捜査会議に被害者の弟であるヤクザが詰めかけた時に彼を追い立てて出て行けって怒声を響かせていたのが女性であったこと。

・脇坂さんに談判している時に(あの空間がよくわからない)(なんらかの手続きをする場所?)(に順番待ちしてるひとたち)で隣のブースで頑張ってる女性に対して「引くな」って最上が背中を押す場面の意味が理解できていない。→伊藤詩織さんの事件がモチーフ?

東風万智子

アパホテル

*1:しかしモガ様ったら「ってモガはおもうよ」ってご自分でご自分のことを「モガ」って自称されてたんですけど!!!!!!

*2:妻役の土屋玲子さんは二胡・ヴァイオリン奏者でこの映画の音楽も担当されてる。妻役のクレジットがなぜないのかは謎。