茶の間でおま。

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吉田修一「森は知っている」(29)

鷹野一彦三部作の第二弾。

 

森は知っている

森は知っている

 

・・・って、うえーい、第一弾読んでませんがな!!ってなったんですけど、いわゆるエピソードゼロなので時系列でいうとこれが最初の物語なので無問題でした。むしろ、彼が最後にどういう選択をするのかというオチを知らずに読めたのでその分楽しめた。

吉田氏がこのシリーズは、スパイものが書きたかったのではなく、彼の背景である「大阪で2010年に実際に起きた幼児虐待事件」で監禁されたまま亡くなってしまったあの子たちの話なのだというのが確かに伝わってきて、それだけあの事件のインパクトは強く(貫井氏の「我が心の底の光」もこの事件をモチーフにしたと思われる)(でも、貫井氏にしても吉田氏にしても、事件の被害者が生き残ってることが印象的)(生き残ったことによって新たな苦しみがあるという矛盾)、生き残った彼がどうやってその後の人生を歩んでいくのかと思いを馳せた時に、吉田氏の出した答えがこういうものだったということはやっぱり切ない。そしてその切なさというのが、「夏も若さも一瞬で終わるとか、僕らが知ってることを彼らが知らないから切ない」と言うてらして、大人になるって経験を積んでいろんなことを知ってしまうってことで、それを知らない若い子たちを見て抱く感情が「切ない」なんだなってすごく納得しました。ああ、切ない切ない。

【著者に訊け】吉田修一 産業スパイ小説『森は知っている』│NEWSポストセブン