茶の間でおま。

本とかテレビとかすきなものたち。

「ストリベリーナイト・サーガ」

亀ちゃんの菊田がさいこうにすばらしかったです。好きなのにでも想いは受け取ってもらえなくて、おまえにはわたしのことなんてわからないって言われて、それでたぶんとても絶望したのだとおもう。牧田にあって自分にはないもの。その答えを彼は心の底から欲したのに、そんなふうに言われて、もうどうでもいいやって自棄になったんだとおもう。だから結婚した。そのことをみんな玲子には言わなかった。言えなかった。そんな関係。

でも玲子が命をかけて、そして人生をかけて菊田の命を守ろうとした時、かなしいけど菊田はでもとてもしあわせだったとおもうんだ。自分はなんにもわかっていなかった。好きな女の抱える苦しみも、悲しみも、絶望も、殺意も。牧田にあって菊田にないもの、牧田と玲子に共通するもの、それは人に対する殺意だ。本気の殺意。だから彼女は殺人犯に共感する。共鳴する。そのことを危惧して畏れるのがガンテツだ。

謝ることしかできない菊田は、それでもいつか機会があれば彼女をまた近くで支えると言った。押し掛け女房のような妻に対しても、穏やかな愛情を向けることができた。それを見た時には虚を衝かれた。菊田はもう彼女のそばにはいたくないんじゃないかっておもったから。妻のことは愛せないんじゃないかとおもったから。でも違った。菊田はちがった。全部受け止めて、全部飲み込んで、それからちゃんと正しい道を選択した。彼の中でどんなふうに昇華されたのかはわからない。好きだけどでも。でも。でも。

でも、どうしようもないことだと、諦めがついたのだろうか。好きなった女は好きになってはいけない女だった。でも、もしかしたら、いつか彼女の中から殺意が消えることがあったら、そうしたらその時には彼と寄り添って生きていくことができるんじゃないか。そんな風におもってしまうわたしはきっとなんにも分かってないんだろう。彼女の苦しみも、悲しみも、絶望も、殺意も。