茶の間でおま。

本とかテレビとかすきなものたち。

2021年5月号

・読んだ本

長岡弘樹「幕間のモノローグ」(38)

まさきとしか「あの日、君は何をした」(39)

貫井徳郎「悪の芽」(40)
通り魔事件の現場に居合わせた人が映像をネットに流したことによって時の人となり人々の耳目を集めたことに快感を覚えてさらに犯人の関係者と思われるひとを隠し撮りしようとしたり、成人した息子の責任を親に求めようとしたり、犯人の関係者と思われる人の情報を得るためにブログを解説してただの疑いでしかない状態で個人情報を晒そうとした何人ものひとが、誰かの一言で思いとどまってくれたことにホッとすると同時に、これはファンタジーだっておもってしまうほどにこの世は絶望。良識ある人の言葉に立ち止まってくれたことに希望を見出したいけど、きっとこの世はもっと地獄。たとえネットに晒されても悪いことをしていないのだったらきっとすぐに噂はおさまるだろうからどうってことないっていう軽い気持ちで個人情報を晒すことに抵抗のないひとたたちの存在が怖い。スマホの普及によって気軽に盗撮して気軽にネットに上げてしまうひとたちが怖い。そこに悪いことをしているのだという自覚がないのが怖い。人の写真を勝手に撮ってはいけないし、他人に見せてはいけないというわたしの常識が通じない時の恐怖。

チョ・ナムジュ「82年生まれ、キム・ジヨン」(41)
すごく話題になった本をいまさら読みました。韓国という国のことをもっと知らないといけないなあとおもったけど、それでも日本でも同じようなことはいまの時代でも同じように起きてるし、今ここにある現実を描いただけのこの作品が話題になっていろんな議論のきっかけになったのだとすればよいことだとはおもうけど、なぜきっかけとなったのかは不思議だなっておもう。

今村昌弘「魔眼の匣の殺人」(41)
「屍人荘の殺人」に続くシリーズ第二弾。前作はなんといってもゾンビ設定もそうだけど、メインキャラクタだと思ってた明智くんが序盤で退場してしまったことが衝撃だったわけですが*1今回もわりと早い段階でこの子は重要人物だろうとおもう設定の子*2が退場してしまったのでその潔さが作風なのかな。サキミさまとおもわれてたひとがそうではなく、文中に出てきた研究熱心な助手のひとが女性であったというあたりがキモだったと思われるのですが、ええ、素直に振り回されて楽しかったです。

呉勝浩「マトリョーシカ・ブラッド」(42)

原田マハ「総理の夫」(43)
田中圭ちゃんがW主演する映画の原作読みましたー。どこをどう読んでも「総理の夫」が主役なのですがなるほどW主演なのですねという屈託。政治家の夫といえばドラマ「民衆の敵」を思い出してわたしのすきな役者たちがなにひとつ報われなかった作品だったなーって苦い想い出しかなくモチベが上がらなかったので原作読んだけどこれは映画を先に見た方が良かったかなーとちょっと後悔。映画たのしみ。天然キャラの田中圭ちゃんたのしみ。おもしろかった。泣いた。一国の首長の妊娠出産というのは原作が出た当時はファンタジーだったかもしれないけどコロナの時代を経た今わたしたちはニュージーランドの実績を知っているから。日本の政治に心底うんざりしている人間にとっては涙なくして読めない感動のファンタジーだった。いや、これをファンタジーと断じてはいけないんだよね。男社会で男として生きるしかない女性政治家たちの不甲斐なさを嘆くと同時に、女性政治家たちの女性性がないものとされる現状が彼女たちから女性性を奪っているのだと痛感するし、なんとかして彼女たちが現状を打破してくれないものかと期待してやまない。わたしの投票時の指標は、女性であること、女性がいなければ候補者の中で一番若いこと、なので。

一本気透「だから殺せなかった」(44)

市川憂人「グラスバードは還らない」(45) 

 

・見た映画

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年末に録画してたやつを視聴。GWバンザイ。お葬式の中で語られてた「つぐない(テレサテン)」を歌うお父さんというエピソード(伊藤沙莉ちゃんじゃん!!)と、最後にお母さんが窓に座って歌ってたのがその「つぐない」だというのがつながってアハ体験でした。 不器用なおとなたちの不器用な人生。でもつきあわされるこどもたちはたまったもんじゃないよね。エンディングの「家族の風景」で歌われてるハイライトとウィスキーというフレーズもグッときた。わたし煙草は吸わないけど、キッチンドランクマザーなので、ウィスキー(ハイボールだけど)のグラス持ちながらフライパン振るから。ほら、昨今って肥満の人とか喫煙者と同じレベルで飲酒者も自己管理の出来ない人だって誹りをうけるじゃないですか。わりと衝撃だったんですよ。日常的にお酒を飲むって、あんまり大きな声で言ってはいけないことなんだ...!って。確かにデブも喫煙者も軽蔑してるけど()お酒呑むのは大人の特権みたいにおもってたんだ...お酒だけは...お酒だけはゆるされたい...という甘え...確かにお酒呑んだら生産性下がるよね、わかる。でもわたしもうなにも生産したくないんだ!お酒呑んでさ、本読んだり映像見たりして感情を昂らせたいのよ。 って煙草をふかせたくなるよね。ためいきの言い訳におとなは煙草をふかすのよ。っていう前時代をわたしは生きていく。という決意。まだまだ肝臓はじょうぶだし。

piroco165.hateblo.jp

「HOKUSAI」
浦上周晟くんの出演映画見ましたー。北斎についてなにひとつ知らないまま見たせいでわからない映画になってしまったの完全にわたしの敗北です...わけわからんわポカーンとなった一番は、あの青い絵の具を持って突然雨の中に降りて顔面にブルーを浴びる場面でした。いよいよ北斎気がふれたか。田中泯というキャスティングはきっとこのためだったんだろうなーとはおもいつつもじゃっかん白けたきもちでいたのはわたしがベロ藍のことをなんにも知らなかったせいです。あれは、今まで見たこともないようなブルーと出会った感動的な場面であったはずなのに、それを知らないせいでなにひとつ心が動かなかった。見る人を選ぶ映画だなっていうのはそういうところだとおもう。なるほどあのブルーと出会ったことによる北斎の絵のブルーの変化。波涛の絵はなるほどブルーだ。瑛太の家に訪れる客間の二人の向かいの部屋にいる嫁が不穏で、また別の時には木戸が閉まっていて、はて、離縁でもしたのかなとかおもたけどそうではなかったようで、でもリークしたのは嫁じゃないかと聞いてなるほどと合点がいった。気になったのは、青年北斎の長屋のお隣さんくらいにいた男の子がお父さんに折檻されてたり、しゃがんで泣いてたり、家の前のベンチにずっとうつむいてすわってたりしてたのが映されていたことにいったいなんの意味があったんですか。彼の泣き声が気になって物語に集中できなかったです。誰も彼のことを助けようとしなかったこともしんどくて、昔はそうやって大きくなっていったのかなとおもうようにしたんだけど、あの泣き声、ひつようだった???不要不急のエンタメを取り締まる現代に通じるせちがらさ。せちがらいという言葉ですませていいのか。自分の作り出したもので世界は変えることができるのか。変わってほしい。ところで写楽の話をしますが、「人あたりの良い狂人」という評に肯うしかない。あれもまた狂人。登場してからなかなかしゃべらなくてこのままセリフなしで終わったらおもしろいな(おもしろくない)とかおもいそうになったけどちゃんとセリフがあってよかった。北斎の3歳下には見えない坊ちゃんだった。なにかお気に障りましたか、と邪気のない目で問われたらそら胸倉つかんじゃうわよねえ。こちとら人生のぜんぶを懸けて絵を描いてんだよ、は?道楽だ??ふざけんじゃねえよ、胸糞わりぃな。デスヨネー。なににもとらわれずに、ただ心のおもむくままに、楽しく絵を描いている(しかし天才)写楽という存在感はぜいたくを言えばちょっと弱かったかなとはおもうけど、北斎とは対照的な如才ない狂人という役はおもしろかったんじゃないかなとおもいます。たった10ヵ月で活動をやめてしまったという史実にも、きっと飽きちゃったんだねって納得できたのすごい。

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・「たむらさん」
あっちゃん主演の舞台が1年間限定で公開されてるやつをようやく見ました。GWバンザイ。ほぼほぼな一人芝居に圧倒されて、終盤の独白にいやもう度肝を抜かれました*3なんて???これぞまさに劇場で観たいお芝居。生のお芝居に触れることで納得できることがあるんだろうなって、見終わってから納得できないわたしが嫉妬してる。くっそ。

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*1:映画では中村倫也の役だけどあれだけ中村倫也出演を煽っておいてそのあたりファンの暴動が起きなかったのかしんぱいしてたんですけど続報が出ないところを見ると暴動は起きなかったんですかね。映画もそのうち見たい。

*2:予知で絵を描く女子高生。サキミさまの孫。

*3:結婚相手が結婚式当日に自殺したんですっていうやつ。