茶の間でおま。

本とかテレビとかすきなものたち。

奥泉光「雪の階」(41)

ミステリランキング本を読もうキャンペーン。早川6位、文春4位、このミス7位作品。さらに第31回柴田錬三郎賞と第72回毎日出版文化賞を受賞、今年を代表するミステリのひとつ。

戦前昭和を舞台に描くミステリーロマン、と銘打たれた長編は確かに浪漫溢れる馥郁とした美しい文章たちでじゅうぶんに堪能しましたが、ミステリとしては心中に見せかけられた事件の真相は痴情のもつれによるものでそれが大尉と中尉による男色の関係が明らかになるのが恐らくクライマックスだったとおもわれるんだけどその時点ではだいぶ体力を使い果たしていてアッと驚く気力がもうなかったです・・・無念・・・結局は「異端の稗史に憑かれたひとりの狂人の頭から飛び出した妄念」に洗脳された兄妹の物語であったのだなと。兄妹三人ともが性愛の相手に男女を問わないあたり、「あなたもそうでしょ?」と言う姉尼僧の言葉にわたしも絶句して苦笑したわ。あと何度か妊娠して中絶をしたことがあると語るくだりでだから「女を相手にする方が無難だわね」っていうのがとどめでしたwいやはや。令嬢惟佐子さまの奔放な性の修行過程もただ美しいだけではない物語なのだと仄めかされるようでしたが、後半の精神世界の話が出てきたあたりから眉唾物で、このままファンタジーで終わったら壁本になるなとおそれていたのですがちゃんと現実に落としどころがあってよかったです。惟佐子さま早く正気に戻って、ってずっとおもってた。読み始めからずいぶん時間がかかってしまったので帯の文字とかすっかり忘れてて、最終章の終盤に出てきた二月二十六日という日付に二・二六事件か!!!って合点がいったのわれながらポンコツすぎておもしろかったです。昭和史めちゃめちゃ苦手なんや・・・。なんせ事件が発覚して、解決しようって主要キャラクタが登場してから真相が明らかになるまでに1年以上を有しており、そのまどろこっしい展開がなんというか呑気というかきみたちほんまに事件を解決しようとおもてるん!?ってなんべんもおもった。惟佐子さまのビジュアルがとても気になる。理系お嬢様と言えば西之園萌絵か、なるほど。